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卵管留水腫

卵管留水腫とは?

卵管は、図のように子宮から腹腔内へ延びる管状の器官で、子宮に近い側から卵管間質部、卵管峡部、卵管膨大部に分けられ、卵管采と呼ばれる部分が腹腔内へ開口しています。

卵管留水腫の説明図

卵管采は腹腔鏡で観察すると、イソギンチャクの様な形状で卵巣の表面を覆っています。発育した卵胞が卵巣表面から隆起し、まさに破裂する(排卵)頃に、卵巣采(卵巣に付着する卵管采の一部)が滑って移動し、卵管采自体も律動的な動きを繰り返すことで、排出される卵子を吸い上げます。

この現象はピックアップ(捕捉)と呼ばれ、卵子が卵管膨大部で精子と出会うために不可欠な卵管采の働きです。一方、骨盤内の炎症や子宮内膜症によって卵管周囲や卵管采周囲に癒着を生じると、卵管内にうまく卵子を取り込むことができません。このような状況を「ピップアップ障害」といい、不妊原因が明らかでない方の多数に見られると推測されています。

このように妊娠成立には非常に重要な役割をする「卵管采」ですが、クラミジアや淋菌などの性感染症や、骨盤内の手術、や子宮内膜症によって卵管采が高度に障害され、卵管開口部が完全に塞がれてしまった場合には、卵管内の粘液分泌細胞から産生される卵管液が卵管膨大部に貯留します。

特に、卵管液の産生は子宮内膜と同様に女性ホルモンに制御されているため、月経周期によって卵管内に貯留する液量も変動するものと考えられ、このことが後述する自覚症状や診断の困難さに影響を及ぼします。

ちなみに、卵管液の貯留によって卵管(膨大部)が拡張した状態を一般に「卵管留水腫(卵管留水症)」と呼び、これ以外に卵管内に血液が貯留した「卵管留血腫(卵管留血症)」、貯留した卵管液に感染を生じた「卵管留膿腫(卵管留膿症)」とを合わせて「卵管留症」と呼びます。ここでは、解説を易しくするために卵管内に液体が貯留した状態を「卵管留水腫」と統一していきます。

卵管留水腫の症状

①  大量のおりもの(帯下:多くは赤褐色)
②  不正出血
③  (感染を起こすと)下腹痛、発熱

卵管留水腫の症状ですが、最も重要なのが「驚くほど多いおりもの(帯下)」で、その性状は「さらさらした水様性」で、色は「赤褐色、茶褐色、淡血性」が多いようです。問診では、「不正出血」や「おりものが気になる」と表現される方も多く、問診する側も「卵管留水腫の可能性」を念頭に置いて詳細な症状を確認する必要があります。

特に、卵管液の産生は女性ホルモンの上昇に伴い亢進するため、大量の帯下は排卵期周辺に出現することが多く、ご本人だけでなく問診する側も「おりものが多いのは、排卵が近いため」で片づけてしまうことも多くあります。その一方で、卵管内容液に感染を起こさない限りは腹痛や発熱などの強い自覚症状は出現しないため、なかなか診断に至らないケースも決して少なくありません。

卵管留水腫の診断

卵管留水腫の診断

1.  超音波検査
卵巣周囲、あるいは子宮周囲に血管や腸管とは異なる「低輝度(黒く描出される)のソーセージ状の陰影」があれば、卵管留水腫が疑われます(右図参照)。しかし、いつも必ずこの「ソーセージ状の管」が見えているかといえば、そうとも限りません。

月経周期によっては消失していることもありますし「驚くほど大量の帯下」があった後では、跡形もなくなっています。また、最も出現する可能の高い排卵期では、発育卵胞と間違えられてしまう可能性もあります。体外受精前の卵巣刺激で普段よりも女性ホルモンの量が増加した場合にはじめて出現する場合もありました。
                            〚卵管留水腫の超音波所見〛


 
 
2.  子宮卵管造影検査
卵管留水腫の確定診断は、「子宮卵管造影検査」と「腹腔鏡」で行います(下図参照)。ただし、子宮卵管造影検査も単に造影剤を流すだけで終了しては、確定診断はできません。造影剤を注入してから、少なくとも1時間後以降に再撮影を行うことが重要です。
〚卵管留水腫の子宮卵管造影所見〛 (造影1時間後)〚卵管留水腫の腹腔鏡所見〛
〚卵管留水腫の子宮卵管造影所見〛
(造影1時間後)
〚卵管留水腫の腹腔鏡所見〛

 

卵管留水腫と不妊・流産

卵管留水腫が不妊症に関連する要因としては、当然ながら排卵した卵子がピックアップされない「ピックアップ障害」が最初に挙げられます。

では、体外受精で良好な胚を子宮内に移植すれば妊娠できるかというと、じつはそれほど単純な問題ではありません。

1994年に卵管留水腫が存在する方の体外受精の妊娠成績が不良であるという報告が初めてなされました。この理由として、
貯留した卵管内容液が胚に対する毒性を持っているという説(胚毒性)
子宮内膜の着床能を低下させるという説(内膜毒性)
内容液が胚を子宮外へ押し流してしまうという説

があり、無治療の卵管留水腫があった場合は、卵管留水腫のない場合に比べて、胚移植あたりの妊娠率は1/2程度まで低下すると報告されています(両側の場合は1/3以下)。

さらに、妊娠反応が陽性になった場合でも、卵管留水腫がない場合よりも流産率と子宮外妊娠率が高いことが知られており、1999年には化学的流産率(妊娠反応が陽性でも胎嚢が確認されないまま流産となること)が2倍以上(14% vs. 37%)であり、子宮外妊娠の頻度も2倍以上(3% vs. 8%)とニューヨークのコーネル医療センターが報告しています。つまり、卵管留水腫がある場合には、胚移植あたりの出産まで到達できる確率(生産率)は、卵管留水腫がない場合の1/4以下と考えられます。

卵管留水腫の治療

卵管留水腫を認めた場合の治療法には、どのようなものがあるのでしょうか?まず、卵管鏡下卵管形成術(FT)はあくまでも子宮に近い部分(卵管間質部や卵管峡部、卵管膨大部)の閉塞に対しては極めて有効ですが、卵管采の閉塞に対しては無力です。治療には、以下の選択肢があります。

(1)  卵管開口術
卵管采に切開を加えて卵管を開口し、再閉塞防止のために切開部を翻転固定


(2)  卵管切除術
卵管間質部と卵管峡部の移行部で子宮から卵管を切断し、卵管自体を摘出


(3)  卵管クリッピング術
卵管間質部~卵管峡部に金属またはプラスチック製のクリップを留置し、卵管内容液の子宮への流入を防止


(4)  卵管内容液穿刺吸引術
経腟超音波ガイド下に、卵管留水腫を穿刺し内容液を吸引除去


(1)~(3)は、腹腔鏡手術で行うことが現在では主流になっています。ただし、高度の癒着を認めた場合には開腹術で行うこともあります。(4)は、局所麻酔で実施することが可能であり、入院も必要ありません。

(2)~(3)を両側に実施した場合は、当然のことながら自然妊娠の可能性はほぼ0になります。(1)の卵管開口術では、自然妊娠の可能性は残りますが、術後の妊娠成績は13~25%で、子宮外妊娠の頻度も高かったと報告されています。

(4)の卵管内容液穿刺吸引術は、胚移植後の成績を向上させるという目的で行われる場合がほとんどですが、多くの報告で「臨床妊娠率は上昇させない」と結論づけられており、穿刺3日後には約12%、穿刺7日後には約31%に卵管留水腫の再発が認められたとする報告もあります。

(2)の卵管切除術を行った場合の体外受精の妊娠成績は、2002年のコクランレビューによれば妊娠率が約1.8倍上昇し、生産率も2.1倍上昇したと報告されています。しかし、卵管切除術のデメリットとして、卵管切除術を行うと卵管側から卵巣へ向かう血流低下により、卵巣機能自体が悪化する可能性も指摘されています。しかし、その一方で、卵管留水腫そのものが卵巣血流を悪化させている可能性もあり、卵管内容液穿刺吸引術後に卵巣反応性が向上したという報告や、卵管内容液が卵胞の下垂体ホルモンに対する反応性獲得にも悪影響を及ぼしているという説もあることから、現段階では卵管切除術後でも卵巣の著明な反応性低下にはつながらないという考え方が有力です。

ただし、卵巣予備能力が極めて不良である方の場合には、やはり(3)の卵管クリッピングを考慮すべきかもしれません。クリッピングのデメリットとしては、異物を体内に残す点や、卵管留水腫そのものは残存するために、万が一にも穿刺等により感染を起こした場合には、卵管留膿症を発症する可能性があり、再度、卵管切除術を要することがある点には留意する必要があります。最終的には卵管留水腫の大きさや、卵管切除範囲を最小限に限定できるか否かなどの術中所見で判断する必要があると考えられます。

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