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体外受精について

当クリニックにおける体外受精

当クリニックにおける体外受精

当クリニックでは卵管通過障害に対する卵管鏡下卵管形成術を積極的に行っており、人工授精を含めた「一般治療による妊娠」をできるだけ目指す方針としています。しかしながら、これらの治療法にも限界があり、一般治療が奏功しないご夫婦にとって、いまや体外受精を含めた生殖補助医療は欠かせない治療法となっており、日本産科婦人科学会によれば、2010年の国内における生殖補助医療による出生児数は約2万9千人にのぼり、じつに37人に1人がこの治療によって出生しています。

当クリニックは、平成25年5月に日本産科婦人科学会が認定する生殖補助医療の認定施設に登録され、すでに多くの体外受精/顕微授精-胚移植・凍結融解胚移植を実施しており、多くの方によいご報告をさせて頂いています。今後も可能な限り、「一般治療による妊娠」を目指していくことに変わりはないのですが、一般治療では解決できない原因が存在する場合や、一般治療を一定期間(※)行っても妊娠に至らない場合には、最終的な方法として、生殖補助医療へのステップアップを提案させていただきます。

(※)一定期間:女性年齢や、卵巣予備能、不妊期間、今までの治療歴によって異なりますが、数ヶ月~半年間と考えています。特に、人工授精を6回実施しても妊娠に至らなければ、その後の人工授精による妊娠は、あまり期待できないとされています。

生殖補助医療の適応
当クリニックにおける体外受精

なお、生殖補助医療は妊娠だけを目的とするものではなく、安全な出産を目指すとともに出生児の健康を守ることも重要です。その観点から、生殖補助医療を実施する施設に対しては、移植する胚数は制限されており、出生児の長期予後調査も求められています。当クリニックでも日本産科婦人科学会の規定を遵守する立場から、移植胚数は原則として1個のみとし、年齢、治療回数を考慮しながら移植胚数は最大2個までとしています。また、治療成績については、体外受精で出生した児の状態を含め、日本産科婦人科学会への報告が義務付けられており、学会や論文発表に用いられることもあります。個人情報の取扱いには充分留意し、ご夫婦及びお子様の人権が損なわれることがないよう当クリニックの規定により個人情報を保護いたしますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

受精障害のリスク

受精障害のリスク

採取された精液所見(精子濃度、精子運動率、奇形精子率)が良好であった場合でも、体外受精(媒精)後に、受精卵が全く確認できない全受精障害か、受精率が極端に低い受精障害が約10%の確率で発生すると報告されています。通常、自然妊娠歴のあるご夫婦の場合には、受精障害が発生することはまれですが、体内環境と体外環境による精子運動性の変化等により、受精率が極端に低下する場合もあります。
なお、採卵当日の精液所見が予想以上に不良で、受精障害のリスクが高いと予想された場合には、当クリニックの基準により顕微授精へ変更いたします。ただし、顕微授精でも、必ず正常受精するわけではありません。正常受精するためには、卵細胞質内に精子が注入された後、卵子が活性化されることが必要ですが、この過程に障害があると、顕微授精の場合でも受精しない、あるいは異常受精を起こすことがあります。また、卵細胞膜を針で穿刺することにより、卵子が変性することもあります。

写真左:正常受精 写真右:異常受精

写真左:正常受精 精子側の核(雄性前核)と卵子側の前核(雌性前核)の形成
写真右:異常受精 (前核が3個形成)

検卵

穿刺して吸引した卵胞液中に卵子が含まれているかを、胚培養士が顕微鏡下に確認します。確認された卵子は、培養液へ移され、至適環境下で数時間にわたり培養されます。

検卵用クリーンベンチ(左側下に手術室と通じるパスボックス)

検卵用クリーンベンチ(左側下に手術室と通じるパスボックス)

写真左:採卵直後の卵子(卵丘細胞複合体) 写真右:採卵直後の卵子(拡大)

写真左:採卵直後の卵子(卵丘細胞複合体)
写真右:採卵直後の卵子(拡大)

受精

i)体外受精(媒精)

調整した精子を卵子の存在する培養液内に一定の割合で注入(媒精)し、その18~20時間後に顕微鏡下に正常受精の有無を確認します。

i)体外受精(媒精)
ⅱ)顕微授精

卵子の周囲にある卵丘細胞を酵素(ヒアルロニダーゼ)によって取り除いた後で、卵子の成熟度を確認します。未成熟卵子は顕微授精に使用しません。精子に必要な処置を加えた後で、顕微鏡でくまなく精子の状態を確認します。形態が正常な良好運動精子を、顕微鏡下にマイクロマニピュレーターを用いて、最初に運動しない状態にさせます(不動化)。そして不動化した精子を極めて細い針内に吸引し、特殊なピペットで固定された成熟卵子の細胞質内に穿刺して、吸引した精子を注入します。当院では、NARISHIGEの空圧式インジェクターを使用しています。
受精の確認は顕微授精を実施してから18~20時間後に行います。

顕微授精用マニピュレーター

顕微授精用マニピュレーター

実際の顕微授精

実際の顕微授精

顕微授精のイメージ図

顕微授精のイメージ図

ⅲ)スプリット法

不妊原因が不明である場合には、精液所見が良好でも「受精障害(※)」は完全に否定できません。
特に自然妊娠歴がない方の初回採卵時には、慎重に受精方法を検討する必要があります。だからといって、最初からすべて顕微授精にしてしまうと、「受精能力」があるかどうかが不明のままで、また妊娠率や胚盤胞到達率が高いと言われている「一般体外受精」のメリットも活かせません。そこで、当クリニックでは、採卵で得た卵子の半分に対しては、「一般体外受精」を残りの半分には「顕微授精」を実施する「スプリット法」をお勧めしています。

(※)受精障害:採取された精液所見(精子濃度、精子運動率、奇形精子率)が良好であった場合でも、体外受精(媒精)後に、受精卵が全く確認できない全受精障害か、受精率が極端に低い受精障害が約10%の確率で発生すると報告されています。通常、自然妊娠歴のあるご夫婦の場合には、受精障害が発生することはまれですが、体内環境と体外環境による精子運動性の変化等により、受精率が極端に低下する場合もあります。

胚培養

正常受精した受精卵を1~5日間にわたり、至適環境下に培養器(インキュベーター)内で培養します。使用する培養液に関しては、受精方法によって種類を変え、初期胚培養用と後期胚培養用で組成の異なる培養液(Sequential Medium)、あるいは受精から胚盤胞まで同じ組成の培養液(One-step Medium)を用意し、できるだけ患者様ごとに胚の発育環境に最も適した培養液を提供できるように努力しています。

胚凍結および融解

当クリニックでは、以下に該当する場合には、胚凍結を行うことにしています。

  • 新鮮胚移植時に余剰胚がある場合
  • 卵巣過剰刺激症候群の発生が危惧される場合
  • 着床率低下の可能性が高い場合
  • 新鮮胚移植が反復して不成功の場合
  • 母体の体調が不良である場合
胚凍結用のタンク (転倒防止用のチェーンも取り付けています)

胚凍結用のタンク
(転倒防止用のチェーンも取り付けています)

上記の胚凍結の適応に該当し、胚凍結を行う場合には、分割胚数や胚質を参考に、今後の治療プランを考えた上で凍結する発育段階を決定します。
胚を凍結する実際の凍結方法としては、細胞内液を高濃度の凍結保護剤で置換し、-196℃の液体窒素の冷気を利用して間接的に胚を冷却する閉鎖型の超急速ガラス化凍結法を用いて、胚を凍結しています。この方法であれば、胚が直接的に液体窒素に接触する心配がないため、液体窒素内でのウィルス感染のリスクを回避することができるという利点があります。
また、胚の融解方法は、急速融解法を用います。液体窒素内から37℃に保温した融解液内へ投入し、胚の融解用に調整した培養液中で融解操作を行います。

体外受精の成績

当院における開院から平成26年9月末までの高度生殖補助治療の成績をご報告いたします。

新鮮胚移植の成績(40歳未満)
新鮮胚移植の成績(40~45歳未満)
凍結融解胚移植の成績(40歳未満)
凍結融解胚移植の成績(40~45歳未満)